52ヘルツのクジラについて考えた

はじめに 52ヘルツのクジラは、他のどのクジラとも異なる周波数で鳴き続ける、謎の多い存在です。 1992年、米海軍の水中音響監視システム(SOSUS)で通常のシロナガスクジラ(15~25Hz)やナガスクジラ(20Hz前後)よりも高い、52Hzという特異な周波数で鳴くクジラがいることが発見されました。 「世界で最も孤独なクジラ」として知られ、海洋生物学者や音響学者、さらには映画監督や作家にまで影響を与えています。 52Hzのクジラは実在するのか? 本当に孤独なのか? 調べてみました。 音の確認 10倍速で録音された52Hzのクジラ音声を1倍速に復元し、スペクトログラムで可視化しました。 色が明るくなっている部分が発声個所で、確かに52Hz付近で鳴いているようです。 データはNOAAの公開データを使っています。 52Hz sound - PMEL Acoustics Program 実際の音源がこちらです。 52Hzは人間の可聴域の下限ギリギリです。イヤホンで聞くと振動が伝わると思います。 10倍速です。512Hzの音が聞こえます。 クジラの発声器官・聴覚器官 52Hzのクジラは、ナガスクジラを含むヒゲクジラの仲間だと言われています。 ヒゲクジラの発声器官・聴覚器官について素人が調べたのでまとめます。 内容はたぶん不正確です😂 発声器官 特殊な形状のU字型またはV字型の軟骨を持っていて、これが振動して音を生成します。 人間と違って、空気を体内で循環することで、水中で連続発声ができるらしいです、すごい! 形状や空気の循環が人間と異なりますが、雰囲気は似てるので52Hz以外の周波数で発声できそう? ヒゲクジラの発声・聴覚器官 出典: Patricia Jaqueline 聴覚器官 人間のような外耳ではなく、複雑な構造をしています。 耳骨が発達していて、水中の振動を効率よく感受できるようです。 共振が影響するのであれば、各クジラ種毎に特定の周波数に特化した器官になっているかもしれないですね。 ヒゲクジラの耳骨 出典: シャークトレーディング合同会社 まとめ 52ヘルツのクジラ、その名の通り実在していました。本当に謎多き存在です。 そのクジラは52Hzでしか鳴けないのか?他のクジラは52Hzの音を聞けないのか?の2点については、確認できませんでした。 ですが、上記どちらかが実は問題なく、そのクジラが孤独ではなければいいな~と思いました。 人任せになりますが、研究が早く進んでほしいです! 参考 哺乳綱・鯨目・ヒゲクジラ(亜目)類 | シャークトレーディング合同会社 52Hz sound - PMEL Acoustics Program さいごに 町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」を読みました。 主題にこのクジラが関連するのですが、とても面白かったです。 みなさんもぜひ読んでみてね!

6月 7, 2025

バイノーラルビートを聞く

バイノーラルビートとは 人間の脳は、それぞれの耳にわずかに異なる周波数を流し込むことで「聴こえないはずの音」(ビート)を自分で作り出します。これがバイノーラルビート(binaural beat)と呼ばれる現象です。 バイノーラルビートは「脳が周波数の差分を知覚する」現象で、FFR(Frequency Following Response)と呼ばれる脳の機能によって発生します。 左右の耳に例えば440Hzと445Hzの音を流すと、その差(5Hz)のリズムが脳内で生じ、このビートを感じます。 この効果を活かした音は、集中、リラクゼーション、睡眠などの補助に古くから利用されています。 聞いてみる 周波数によって異なる効果が得られます 1–4 Hz:Δ(デルタ)波 → 睡眠・深い休息 4–8 Hz:Θ(シータ)波 → 瞑想・夢見状態 8–12 Hz:α(アルファ)波 → リラックス・創造的思考 12–30 Hz:β(ベータ)波 → 集中・覚醒状態 ※ステレオヘッドホンが必須です 両耳に独立した信号を届けるため、ヘッドホンでの視聴が必要です。 バイノーラルビートで遊べるアプリを作りました。 以下のツールで、バイノーラルビートをすぐに試せます!ぜひ試してみてね! バイノーラルビートメーカー Pythonで試してみる Pythonでも簡単に音声ファイルを生成できます。以下のコードで、左耳440Hz・右耳445Hzのステレオ音声(10秒)を作成できます: # pip install numpy soundfile import numpy as np import soundfile as sf rate, dur = 44100, 10 t = np.linspace(0, dur, rate * dur, endpoint=False) left = 0.5 * np.sin(2 * np.pi * 440 * t) right = 0.5 * np.sin(2 * np.pi * 445 * t) stereo = np.stack((left, right), axis=-1) sf.write("binaural_10s.wav", stereo, rate) ☕ さいごに この記事を作りながらバイノーラルビートを聞いていたら耳が疲れました。 ...

6月 7, 2025